私の京指物 私の木工芸 やっちまった!失敗エピソード7話
新しく青年部に入会しました桶屋の近藤です。
やっちまった失敗エピソードといえば
僕らが木工の仕事するときには鉋(かんな)などの刃物が必需品です。
日本の刃物は刃の裏をわずかに剥き取った「裏剥き」(うらすき)というのをしてあるのが特徴で、このおかげでよく切れて研ぎやすいのですが、使って研いでを繰り返していくと裏刃が無くなってしまいます。
鉋の裏刃
こうなるといくら研いでも良い刃がつかないので「裏出し」という作業をします。
これは金床の上に刃を当てて表側から金槌で地金をコツコツと軽い力で何度も叩いて鋼(はがね)を裏に押し出すのですが、これが実に難しいんです。
鉋の裏出し
刃先を叩けば当然刃が欠けるので、表刃の中程より手前を、心を鎮めて脇を締めて手先がブレないように細心の注意をして叩き続けますが、ときにはあと少しというところでヒビが入ってしまうときもあります。
その時のショックたるや思わず一人仕事場で「嗚呼〜!」と叫んでしまうほどです。
そのあとしばらく立ち直れませんが、そんなときには修行時代に読んだ秋岡芳夫著「日本の手道具」にあった東京の組子名人 佐藤重雄さんの研ぎの心得を思い出します。
「折角鍛冶屋さんが苦心してしてキレルようにこさいてくれたものを、使うもんがキラセなくっちゃ、だいいち鍛冶屋さんに悪いじゃないですか。 研ぐときにはね、道具と話ししながらやりゃ自然とうまく研げるものなんです。こうして押さえ棒を刃物にあてましてね、研ぎたいところを砥石におしつけてだましだまし研ぐんです。”お前、ここんとこを少し研ぎたいんだ。いいかい。たのむよ”ってね、刃物に話しかけながらやるんです。」
“道具と心を通わせる”
まだまだその境地は遠いですが日々鍛錬です。
次回は崔くんです。
新シリーズが始まります。